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御宿町
御宿町のサムネイル画像

内田 康介さん、史帆さん

古民家カフェ経営
御宿町

素材にこだわった「食」を提供

 千葉県御宿町は、外房海岸沿いの南部、いすみ市と勝浦市に挟まれた場所にあり、人口はおよそ7000人。後に鎌倉幕府の第5代執権となる北条時頼が諸国巡歴の際、景色の美しさに見とれて足を止め、そのまま宿泊したことで「御宿」という地名が生まれたと伝わるが、太平洋を望む美しい海岸線は今も多くの人を魅了する。


 内田康介さん、史帆さん夫妻は、ともに同県習志野市の出身で、御宿の地域の魅力に引かれ、2024年4月に移住。3か月後の7月に古民家を改装したカフェ「koho」を開店した。


 二人とも元は勤め人だったが、素材にこだわった「食」を提供する店を開こうと一念発起。勤めを辞めて沖縄に移住し、料理の修行を一から始めた。沖縄で出会ったのが、動物由来の食物を摂取しない「ヴィーガン」向けの料理だった。


 内田さん夫妻はともにヴィーガンではなかったが、「沖縄で出会ったヴィーガン向け料理は、どれも自然素材にこだわっていました。今のお店で目指している素材本来のおいしさを追求しながら、「異なる食の志向を持つ人同士でも楽しめる」というコンセプトは、そこから学んだものです」(康介さん)と、沖縄での修行が二人の方向性を決めたと言える。およそ2年の修行を経て、生まれ故郷の習志野市に戻った2人は、試行錯誤を重ねた上で、メキシコ料理「ブリトー」を提供するお店を開くことを目指した。

「koho」の店内

 内田さん夫妻は当初、主に関東圏でのイベントに臨時で出店し、お客さんの反応も見ながら、商品の改良を進めていた。最終的にお店を開く場所として御宿町を選んだのは、まったくの偶然だという。


 「当初は地元の習志野でお店を開こうかとも思っていたのですが、知り合いから飲食店として使える古民家が御宿にあると紹介され、実際に訪ねて一目で気に入りました」(康介さん)ということだが、康介さんはサーフィンが趣味で、外房を何度も訪れたことがあり、ある程度の土地勘があったことも、御宿町を選んだことにつながったようだ。海岸まで歩いて数分という環境は、サーフィンが趣味の人にとっては最高だが、人間関係が濃密な地域性も内田さん夫婦は気に入っているという。

「koho」のブリトー

 内田さん夫妻のお店「koho」でメーンのメニューとして提供されるブリトーは、メキシコ料理としては日本でもメジャーなファストフードだ。一般的なブリトーは小麦粉のトルティーヤ(薄焼きにしたパン)で具材を巻いて食べるが、「koho」ではヴィーガン向けを意識し、トルティーヤには小麦を使わず、具材にも肉や乳製品を避けたメニューを用意した。その分、作る手間は増えるが、それでもブリトーを選んだのは、「ジャンクフード的なブリトーを『手軽に食べられ、しかも健康的なもの』に変えたかった」(康介さん)からだと言う。


 「koho」のフードメニューは、豆腐のみそそぼろ、塩麹(しおこうじ)の野菜ファヒータ、ニンジンの甘酒ラベ、いすみ市産の無農薬玄米を具材とした「発酵ブリトー」、メキシカンマッシュアボカド、キドニービーンズ、サツマイモ、無農薬玄米の「ワカモレブリト―」、スクランブルエッグ、習志野ソーセージ、ハッシュドポテトにサルサソースを合わせた「ブレックファーストブリト―」の三種類。これらの具材は、ヒヨコマメ粉と米粉にデトックス効果のある麻ずみを混ぜた生地のトルティーヤで巻かれている。


 発酵ブリトーとワカモレブリト―には動物性の素材を使わず、ヴィーガン向けのメニューにしてあるほか、トルティーヤは小麦を使わないグルテンフリーにした。ただし、お店のメニューには、動物性素材を使っていないことやグルテンフリーについては何も書かれていない。


 「素材と味にこだわった結果、このメニューになっただけで、ヴィーガンを意識したわけではありません。ヴィーガンの人も、そうでない人も選択できるものがある。そこが重要だと考えています」(康介さん)。メニュー表には明記していないが、史帆さんが日替わりで作っている焼き菓子も、素材は厳選しているという。

日替わりで提供する焼き菓子のサーターアンダギー

 「実は店名の『koho』も、ハワイの言葉で『選択する』という意味なんです」と康介さんが説明するように、素材にこだわりながら、訪れる人に十分な選択肢を用意するのが「koho」のコンセプトだ。お店の営業時間は朝8時から午後4時(冬は午後5時まで)までだが、ブリトーを朝食として買いに来るリピーターも多い。

 「koho」はドリンクメニューも豊富で、カフェとして地域の賑わいの拠点にもなっている。内田さん夫妻は、「若い人たちの行動の『きっかけ』になるような店づくり」を目指している。「自分で開業したいと思ったのも、地元の習志野や沖縄でいくつものお店に出会ったのがきっかけ」(康介さん)だからだ。


 移住の地に御宿を選んだのは偶然だったが、地元の習志野市に比べれば、家賃は格段に安い。町の移住者支援施策もあって、7月の開店以降、「koho」の経営は順調に推移しているという。

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